小説を詰めていく場所(Log) | ナノ


01





人がチラホラと見受けれる道路。
煉瓦が敷き詰められた、所謂レンガ通りはカップル達に人気の場所だ。男女の間を通るのは気が引けるが私は器用に人込みをすり抜けて彼を追った。しかし速い。走れど走れど間は縮まらず、その差は開くばかりで。

「ちょっと待ってよ!」

ついに追いつくことを諦めた私は大声で彼を呼び止めた。気付いてくれるだろうか。多少心配したが、無用だった様だ。

「なっ、お前は」

気付いてくれた! しかも息を整えて顔を上げると男の人は酷く驚いた様子でそこにいた。

「あっ、あ……の?」

取り敢えず、名前を聞こう。そう思い立ち口を開きかけた。刹那、ちょっと待て、とストップがかかりあれよあれよの間に、私は腕を引かれて銀杏並木の側まで連れていかれる。何なんだ一体。と頭にハテナマークを浮かべたところで、次は男の肩へと乗せられた。俵を抱える時と同様の持ち方。
「大人しくしとけ」

「へ? ……うわ、わぁあぁあーっ!」

――景色が一瞬で変わった。

* * *

「な、何、さっきの……!」

「瞬歩だ」

息を整えることに精一杯の私と違い、さも当然のことの様に答える彼。景色がびゅんびゅんと後ろへ飛んでいく恐怖、貴様には分かるまい、と軽く睨むが受け流された。




×