01
ロイ/微甘・名前変換なし
随分と懐かれたものだと思う。
最初お会いした時は口すら聞いてくれなかったのに。
ある日突然執務室にやって来た彼女は、それ以来自身に課せられた膨大な業務から逃げる為の手段として頻繁にやって来るようになった。そんな彼女の特等席は部屋の片隅に置いてあるソファで今や寝息が聞こえてくる状態であった。
「少将、……少将起きて下さい」
何時もの様に寝てしまわれた彼女の肩を揺さぶる。時計の針はとうに定時の時間を指していた。
「もうこんな時間? あぁ、よく寝た」
寝覚は良いのだ。小さく欠伸をするとモゾモゾと動き、直ぐに目を開けて時計を見た。確か、彼女が此処に来たのは昼を少し過ぎた頃。つまり、仕事を放り出したのもその時から。……私の副官がこの人の副官であったならば、今起きることなど出来まい。定時を迎える迄に蜂の巣だ。
「万が一見付かってしまったらどうするんですか?」
ため息を一つ。
ノックの度に冷や冷やとするのはこちらなのだから、上官とはいえ少しくらいの無礼は許されるだろう。
「そんなの、貴方が口を割りさえしなかったら良いことじゃない」
しかし、彼女は悪びれない。
「少将、等価交換と言うものをご存知で?」
起き上がり、乱れた髪の毛を手櫛で直した彼女は自分の身体に掛かっていた軍服を投げて寄越した。ぞんざいに扱われてはいるが、それは私のものだ。残り香の混ざるそれを受け取る。決して悪い気はしない。
「愚問ね、私も錬金術師ってこと知っているくせに」
「私が咎めを受けた場合、少将は私にどのような等価を下さるんですかね?」
少将には失礼ながらも、ほんの軽口の叩きあいが心地好い。
「……生意気な。マスタング大佐殿は一体何が欲しいの?」
「貴方が下さるものであれば何でも」
ふむ。口元に手を当てて、何やら真剣に考えている様子。暫く経ってから笑顔で私の方を向いた。
「そう、ね。再就職先をあげる」
「はい?」
まさかのハローワーク。
確かに対価には丁度良いかもしれないが。果たして、私は国軍大佐から何に転職してしまうのだろうか。
「私の屋敷の家政婦よ。人数が少なくて皆さん大変そうだから。ねぇ、素敵でしょう?」
「ええ、とっても」
自然と出て来る笑みに、それもいいと思ってしまう私は末期なのかも知れない。
つまり、貴方の傍にずっといられるってことだろうから
(まぁ、貴方は気付いていない様だけれども)
身分とか地位違い大好き。
禁断とか萌えます。
T A B O O ! (b^ー°)
9月30日 灯亞・
×End