01
雲雀/ギャグ・甘?
「姫、もしかしたら引越ししないといけなくなるかもしれないわ……」
――そう言われたのが、二ヶ月前。
確か、その時、私はテレビのリモコンを探していた。
「ゴメンなっ! お父さんのせいで……」
――更に、そう言われたのが、今日の朝。
マヌケにも、ただ口を開けて唖然とするしかなかった。
引越しの理由は、お父さんの転勤。というか左遷に近い、って何したのよ。
……前に言っていたことって、冗談じゃなかったんだ。
当然嫌なものの、これは所謂、大人の事情であって、子どもの私なんかにどうにもならない。
……って、だったらどうしろっていうのよ!!
* * *
「はぁ……」
とりあえず、私は最後になるかも知れない通学路を、足取りも重いままに歩いていた。
最後だなんて、受け入れたく無いけれど。
結局、あの後お母さんには……引越しは三日後だから、友達にはちゃんと言っておくのよ。とかなんとか言われて送り出されたし……「第一、いきなり過ぎだって! だぁぁぁ! こんなことなら毎日を大切に過ごしておくんだったー!!」
手に握っていたカバンをぶんぶん勢いよく振り回す。
傍から見れば、変な人。
「姫ちゃんっ、何やってんの!?」
不意に聞こえた声にピタリと止まり、後ろを振り返ると、ススキ色の髪を重力に逆らいフワフワさせた少年。
私のお友達、沢田綱吉が走って来た。
「あっ、ツナ。おはよう」
「おはよ……じゃなくて! 一体、朝っぱらから何やってたの?」
流石、ツナ。
まだ早朝で、小鳥さんが鳴いているというのに、素晴らしいノリツッコミだ。
私は、渋々話すことに決めた。
「見てたんだ、見てたのね? 実は、あのね……うわぁぁん!!」
なんか、顔見たら泣けてきた。ずっと幼馴染だったのに、いきなりお別れだもんね。
何とか落ち着いて、ツナに事情を話した。
それはもう捲し立てるように。
因みに足は頑張って動かしていた。
残り少ない学校生活、遅刻なんてしたくない!
最初は私と同じようにパニックってたツナも、少しずつ話が飲み込めた様だ。
「ねぇ、雲雀さんはどうするの?」
ある程度、話終えた後、ツナが遠慮がちに口を開いた。
「あーーっ!!」
辺りに私の声が盛大に響き、ツナは耳を手で塞ぐ。
……本当に早朝から、近所の皆さんごめんなさい。
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