小説を詰めていく場所(Log) | ナノ


01


骸+10/シリアス





鼻に刺さる消毒液の匂い。生活感も感じられない程、不自然な白い部屋。
在るものと言えば、彼女が、何時も横になっているベッドと、小さなテーブル。

唯一の色である、花の水を代えに行こうとドアノブに、手を伸ばした瞬間のこと。


「骸はさぁ、天国ってあると思う?」

「どうしたんですか、いきなり」


彼女はそう聞いてきた。
明日晴れると思う? とでも、言うかの様に。

何となく、なんだけど。
彼女は付け足す。真っ直ぐに見つめている瞳からは、その質問の真意を読み取ることは出来なかったが、――残りが少ないことだけは、理解することが出来た。

「僕は、宗教と言うものは信じてはいませんが……無かったら良い、とは思います」

「どうして?」

彼女には意外な答えだったのか、首を傾げる。

まぁ、無理もない。世間では、天国と言うものは、全ての者が幸せに成れる所、とされているのでしょうから。

無ければ良い。
そんなことを言うのは、余程の捻くれ者か、それとも――。


「そうですね。死んだ後、みんながそこへ行くのだとしたら……僕はきっと、貴女と同じ場所には行けれないから、ですよ」

目の前の、無垢な彼女は僕のやってきた事を知らない。
能力――忌まわしい呪いを知らない。知ってしまえば、元の様には戻れない。知る必要は無い。

「骸って、時々難しい」

首を捻る。

「ほら、いい子は寝なさい」

持っていた花瓶を、側のサイドテーブルに置き、彼女の額に手を乗せる。
擽ったそうにしながらも、素直に目を閉じた。

「ん、おやすみ」


来世でまた巡り逢う約束を
(どうか、巡って下さい。何年掛かってでも、見つけ出しますから)


――無性に、涙が溢れた






シリアスは苦手です(-"-;)
名前変換、無しでごめんなさい。


1月18日 灯亞
お題:なきむしシェリー



×End