小説を詰めていく場所(Log) | ナノ


01


スクアーロ/甘?



彼女は何時だって手抜きな事はしないし、何事にも全力。

今のこの時間もそれは例外では無い。

「あっ、曲がった!」

首元をグイッと引っつかまれたと同時に、一瞬息が詰まり「う゛ぉっ」と情けない声が出る。
……この状況が約10分間位、延々と繰り返されていた。

「なあ、もういいんじゃねぇか?」

そうやって、何度も自分的には優しく言ってみるものの、目の前――細かく言えば、身長差によりずっと下にいる彼女、姫は頑として動こうとしない。

諭すように頭を撫でてみるが、それでも動かない。ただ首を振り、半分自棄になりながらそれを引っ張っている。

「だって、同盟ファミリーが集まるパーティーでしょ? ネクタイが曲がってたら格好悪い、じゃない……」

自信を失ってきたのか、段々と悄気(しょげ)てくる姫。

自分がしたいって気持ちも解らなくはねぇが、時間が危ない。

そこまで大層なパーティーではねぇが……遅れたりしたら、それはそれでマズイぜぇ。
第一コイツがこうも、したがる理由って何なんだぁ?

少しの間、考え込む。

待てよ……前も、こんな事があった様な気がする様な。

あれは、確か……ルッスーリアが【ワショク】ってヤツを作った時だぁ。
そん時は、自分も作れる様になりたい。とか言いながら出来るまで練習してたなぁ。
懐かしいぜぇ。あの同じもんばっかり晩飯に並んでいた日々。
そこまで考えて姫をもう一度見る。

「う゛おぉい、もしかして……【何時ものヤツ】かぁ?」

ため息混じりにそう言うと、ピタリと姫の手が止まった。

やっぱり図星かぁ。

ちょっとばかし劣等感が強く、負けず嫌いな姫のこと、また誰かと無意識の内に比べてしまったのだろう。

他の奴は出来るのに、それなのに、自分には出来ない……そんな感じで自棄になってんだろうなぁ。

「いいかぁ、何時も言ってるけどな……あれだ……あー……ああ、個性ってヤツだぁ」

自分で言っていてなんかズレてる気がするぞぉ……。幸い、姫は気付いてねぇが。

「……だから、姫は気にする事ねー。そのうち出来る様になるからなぁ」

姫の肩を軽く叩くと、ゆっくりと頷いた。……伝わった、かぁ?

「ん、何となく分かった。でも今度教えて?」

どうやら、どうにかこうにか伝わったらしい。【何となく】ってのが気にになるが……。

「よし、今度教えてやるぜぇ」



キミはキミなりに
(やべえ、時間がっ)(わわっ、いってらっしゃい!)






×End