01
エース/切
冬の寒さが布団の中の温もりを引き立てる。起床時刻だと頭では分かっていても身体は動かない。
自然と瞼が重くなって二度寝の態勢に入る。
「姫!」
瞬間だった。
ドアが開けられる音と共に、よく知った声が聞こえた。何時までも寝ている私に痺れを切らしたエースが起こしに来た様だ。
厳密に言えば――何時までも布団から出ない私を、だけど。
「ほら、早く起きろ。飯が冷めちまうぜ?」
最近の変わらない風景にエースは呆れているのだろう。その表情はわざわざ布団から出て、見るまでもなく明らかだ。
「もうちょっと……」
「何時もそう言ってんじゃねえか」
ペシペシと布団の上から叩いてくる手。なんて容赦ないんだ。起きようと試みるが、どうも私の身体は布団と一体化してしまったらしい。
「エースも、はい。お休み」
「ちょっ、姫」
非難の声を無視して、エースを引き込む。本気を出せば抜け出れるだろうに、それをしない彼。無性に嬉しく感じた。
暖かいし、ホッとする温もりが広がる。
それは手放したくなくて、とても……大切なものだった。
「ねぇ、私……幸せ」
「そっか」
それは良かった、と。
――エースは、わらった。
「姫さんまだ目、開けませんね……」
「そりゃあ、な」
ユメでもいいよ。
(目を開けたら、君は此処に居ないんだから)
お題提供:)DOGOD69様より
×End