小説を詰めていく場所(Log) | ナノ


01



ロイ/甘甘



何も事件は起きていない平和な昼下がり。つまり、仕事内容はひたすら書類整理の午後。飽きてきたのか、疲れてきたのか急に大佐が喋り出した。

「棚ぼた?」

「違う、七夕」

東洋にはそんな習慣があるのだという。彼は偉そうに、そう教えてくれた。

因みに、彼にとって怖いホークアイ中慰は席を外しているので息抜きには絶好のチャンスだ。

「願い事を書いた紙を笹に括り付けると、星が叶えてくれるそうだ。何ともロマンチックじゃないか」

先程までひたすら走らされていたペンをクルリと回した大佐。

「……他力本願ですね」

「鋼のも言いそうな台詞だな」

「確かに」

行く先々で事件を起こしまくる小さな錬金術師を思い出したのか、大佐の眉間に皺が寄る。そういえば、彼は元気だろうか。

「つれないこと言わずに書きたまえ。折角のイベントだ」

「えー」



「姫」

「…………」

まだ仕事中であるのに関わらず名前で呼んできた大佐を驚いて見ると、彼もジッと私を見詰めていたので目が合ってしまう。大人びている様(実際、既にいい年頃だが)でいて、意外と子供っぽいところもあるのだ。

「仕方ないなあ」

絶対に書きたくないなんていう事情などないし、別段、害もある筈がない。ただ思い付かないだけである。大佐に近寄ると既に準備していたのか、手持ちサイズに切ってある青い紙と油性ペンを机から取り出して笑っていた。
たった、これくらいのことで何て嬉しそうな顔をしているんだか。思わず頬が緩む。

「……書けた」

自然と思い浮かんできた願い事。
改めて見るとかなり気恥ずかしい。これを笹に吊す、なんて出来やしない。

大佐から笹に吊す用のテープを貰い――大佐の背中にそれを貼り付けた。

「ロイが叶えてくれる? そっちの方がまだ可能性ありそうだから」

こちらも名前で呼んでやる。ロイの何か言いた気な様子を察知して廊下へと飛び出した。

「書類出してきます!」

カモフラージュ用の紙達を胸に抱いて。


* * * * *

「"ロイともっと一緒にいたい"だそうだよ、ハボック。私の恋人は可愛いだろう?」
「……そうッスね」
-
初のロイさん+久しぶりのアップ。
七夕何だか好きです。
皆さんに幸あれ!

7月8日 灯亞.



×End