小説を詰めていく場所(Log) | ナノ


01


恋次/バレンタイン





九番隊の執務室に書類の束を運ぶ。現を抜かす程の暇があるなら貴様が届けてくるがよい、と隊長直々の命が下ったからだ。
地味に重い紙束達は、両手で持たなければ運べない重量。一枚一枚はすぐ風に飛ばされるくせに、なんてくだらない事を考えて歩いていると、思いの外早く目的の執務室へと着いた。

「書類届けに来ました」

気を利かした誰かが開けてくれるだろうと考え、少し大きめに中にいるだろう隊員に声をかける。九番隊は隊長を始め、凄く真面目な隊だ。

「どーぞ、どーぞ」

えらく気が抜けた間延びした声が中から響いた。ああ、今日は例外がいる。

しかも一人なのだろう。扉は自分で開けなければ開かないと言うことを即座に悟った。

「っ、たく……」

ガラガラと幾分か雑に開けると、小さめの炬燵に足を突っ込み、蜜柑の皮を向いている姫がいた。既に何個か食べたのであろう、書き損じた書類と思われるものをごみ箱の形に折った紙の中には蜜柑の皮が沢山かさばっている。
どうやら、薄皮も剥くタイプらしい。

「ヤッホー。阿散井恋次副隊長殿。こんなところまでどーも御足労様ですね」

「本当にそう思うなら炬燵から出ろ!」

青筋が浮かぶが、やるべき仕事は済ませたのだろう、机には出来上がった書類が置かれている。……いやいや、まだ定時になっちゃいねぇ!

「東仙体長に怒られても知らねぇからな」
取り敢えず荷物を炬燵に、ではなくちゃんとした事務机に置く。実はその炬燵は東仙が姫に買い与えた物だということを恋次は知らない。








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