小説を詰めていく場所(Log) | ナノ


01




息を呑む。

姫は東仙隊長が居なくなった後の俺を知ってるから、だから余計にそう思うのだろう。見るに堪えません。あの時の姫は顔を合わせるなり、そう言ってずっと俺の傍にいた。こんな時でさえ、思い出すと堪らなく愛おしい。

そんな姫の最期の願いは叶えられそうになかった。

いくら姫の頼みだろうが忘れる事は難しい。第一、今更残したくないだの何だのは無理だ、意識せずとも見付けてしまう。それは前に話した取り留めのない会話、雑学だとか――日常の何でもないことが急に思い出されるだろう。だから無理なのだ。

「分かった。背負い続けてやる」

――無理だから背負い続けたい。

「えっ!? いや、何で……今の話で何でそうなるんですか!?」

脈絡を無視した俺の言葉にキョトンとしてから、慌てだす姫。その頭に手をのせる。まるで豆鉄砲を喰らった様な顔だ。

「お前だってな、今まで俺の何処を見てきたんだよ。好きな奴に言われたからって俺は、はいそうですかと簡単に忘れてやる様な男じゃねぇ」

バシッと言い切る。どうだ恐れ入ったか、姫の頭をくしゃくしゃに髪を掻き乱す。





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