小説を詰めていく場所(Log) | ナノ


寒い時には手を繋ごう


エース/仄甘
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吐いた息が白く変わったのを見た瞬間、身体が震えた。思わず首に巻いている白いマフラーを引っ掴んで口元まで一気に上げる。

――スッゴく寒い。

現在、防寒具と称される物を思い付く限り身に付けて、それに+αの毛布までをも頭から被っている私だったが、それはひしひしと感じていた。
こんな天候の時に、夜通しの見張り番の順番が回って来るだなんて、全くついていない。

たった2、3日前は夏島の海域に居たのに……。

良い点と言えばそう、ね。星がとても綺麗。


* * *

「お? こんな所に雪ダルマ発見」

「エース隊長!」

不意に声が聞こえて毛布から頭を出す。いつの間にか積もっていた雪が鼻の頭へと落ちた。

「風邪引いてないか?」

器用に見張り台へと上って来る隊長を不思議な気持ちで眺める。隊長はその視線に気付いたのか、どうした? と首を傾げた。

「いや、エース隊長でも服着ることってあるんだなーと、思いまして」

「着なきゃ馬鹿だろ」

人を何時も裸みたいに言うなよ。と呟く隊長に思わず笑ってしまった。

「ごもっともです」

ふーと息を吐く。やっぱり白くなる、それ。


「……にしても、寒いな」

「毛布、入ります?」

「おう」

毛布の端を持ち上げて聞くとニカッと笑うエース隊長。太陽みたいだ。

釣られて自然と頬が緩む。と、手の平に感じた僅かな熱。

「な……っ!」

「こうした方が暖けぇだろ?」

握られた手が、何だか恥ずかしくて。私は一回だけ、ゆっくりと首を縦に振った。




(かーー)(え、エース隊長っ!?)





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辛い物を食べた後は、甘い物が食べたくなる原理です。(!?)

季節を思い切り清々しい程に無視ってみたかった……。


8月3日 灯亞


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×End