小説を詰めていく場所(Log) | ナノ


01


「ん、……」
もぞりと、すぐ近くのシーツが動いた。顔までたくし上げられたそれのせいで息がしにくいのだろう。寝苦しそうに彼女はまた動く。
「……っぷ、はぁ」
ずらしてやるか迷っていると、嗚呼、起きてしまった。擦り寄ってくる彼女の髪はあちこちで遊んでいて、胸元を擽った。
「おはよう」
真っ暗闇の中の光源はフットライトだけ。寝起きである##NAME1##の目はボンヤリとしか景色を映していないのだろう。彼女は目をゆっくりと瞬かせた。
「朝にはまだ早いよ。ゆっくり寝ておいで」
頭を撫でて、言い聞かす。まるで子供を寝かしつけている様だな、と不意に思い苦笑する。確かに自分が彼女より一回りも年上なのは事実であるけれど。庇護欲を余すところなく刺激してくるのは彼女特有のものだろう。
日が登るのはまだまだで姫は今すぐにでも寝てしまいそうだ。
しかし半ば夢の世界にいるのに関わらず、姫はもぞもぞと首を振った。
「でも、ロイは起きてる、でしょ」
「私も寝るとも」
「嘘」
目は閉じているのに眉を潜めている、という不思議な表情の彼女からはっきりとした一文字が突き付けられた。
「どまだまだで姫は今すぐにでも寝てしまいそうだ。
しかし半ば夢の世界にいるのに関わらず、姫はもぞもぞと首を振った。
「でも、ロイは起きてる、でしょ」
「私も寝るとも」
「嘘」
目は閉じているのに眉を潜めている、という不思議な表情の彼女からはっきりとした一文字が突き付けられた。
「どうして、そう思う?」
「雨だから」
確かに窓を雨粒が叩いている。夕方から降り出したそれは段々と激しくなっていき、とうとう本降りとなってしまっていたのだ。
「雨の日の夜はロイは寝ないの」
「っ…………」
見破られていたことに少し驚いた。一応、寝たふりはするのだが。
そう、雨音は嫌いだ。落ち着かないばかりか、それは私をあの地へと誘う――言わば繋がりであって砂礫の土地を連想させる。逃げることは許さないと責め立て続けるのだ。業を背負えと。
未だ、心はそこに縛られているのだ。
「私も雨は嫌いなの、ロイが無能になるし」
「手厳しいな」
話している内に目が醒めてきた彼女と視線がぶつかる。静けさを取り戻していく自分に気付いた瞬間、白い景色が目前に現れた。姫が自ら巻いていたシーツで私を包んだのだ。
「それに、ロイと一緒な理由でもある」
ボソリと呟く姫。
「ああ、だから君はこれを被っていたのか」
寄り添ってくる姫に、どうしようもないくらいの愛しさが沸き上がり、互いの疵を埋めるように抱き合う。微かな温もりさえも逃さないように。叶うなら、君へ素敵な夢を。




×End