好きだから
雲雀/甘
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料理くらいできるわよっ!
そう威勢よく言い切ったのが、そもそもののきっかけであって、私の彼である、恭弥が目の前にいる理由。
「だったら、次の日曜日に作ってよ」
と、まぁ……こんな風に話が進んで行ってしまったのだ。
* * *
「恭弥っ、出来たよー」
料理は、もちろん恭弥の好物であるハンバーグ。
上にかけるデミグラスソースは、市販の物ではなく、自分で手作りしてみた。
……実は、そこが、一番の心配の種でもあるんだけど。
市販の物ならば、まず失敗は無いだろうけれど、手作りの物なんて、少し分量を間違えただけで、レベルが急降下してしまう。
つまり、一発アウトってこと。
「ど、どう?」
カッコつけ過ぎたかなと
か、とんでもない失敗をしていないかなとか、色んな事を考えてしまう。
失敗といえば……そう考えると、よく漫画とかである、塩と砂糖を間違えたーとかを、ふと思い出し、益々不安に陥ってしまった。
チラリ、盗み見る様にして恭弥に目をやると、バッチリと目があった事に驚く。
「ん、悪くないよ。……美味しい」
どうやら、嬉しいよりも何故か、安堵感の方が先に出てしまった様。ホッと胸を撫で下ろす。
「あの時の姫は、自信満々に見えたけどね」
「そう、だけど。いざとなったら緊張するもんなのよ」
「ふぅん。どうして?」
手に付いた僅かなソースを、ペロリと舐める姿にドキリとした。
反則過ぎる。
「わざわざ聞かなくても分かってるくせに……いじわるっ!」
「分かってるけど、姫の口から聞きたい」
真剣な眼で見つめられて、本当に心臓がどうにかなってしまいそう。
それなのに、目の前にいる恭弥は何時もと変わらず、余裕たっぷりの笑みを浮かべているし……だから、反則だって!
試合だったら、とっくに退場。
なんて思ったりして……所謂、これはパニック状態だ。
何か気の利いたとまでは、行かなくてもカッコイイ事が言いたいとか思ったりしてみたけど、綺麗さっぱり吹き飛んでしまった。
「そんなの……好きだから、に決まってるでしょ」
恋は何時でも全力勝負!
(気なんて、抜けれないんだから)
×End