小説を詰めていく場所(Log) | ナノ


点火5秒前


ツナ/仄々
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「あらやだ、余ったやつ置きっぱなしにしてたわ」

そう言って母さんが見つけた花火は今オレの手に握られている。

「もう捨てたら?」

「ダーメ、勿体ないでしょ。物は大切にしないと」

「それって、使うってこと?」

まさか、もう晩夏さえ過ぎてしまったのに。

「そうね、姫ちゃんとでも一緒にやったらどうかしら? 」

「えー……」


* * *

「花火、か」

渡された時は、首を横に振ってみたけれど、後々考えるとそれはすごく良いかもしれない。カレンダーを見ると、今日の夜が丁度空いていた。チビ達も、あのリボーンでさえ用事があって家に居ないし、母さんも外出だ。これはチャンス。

花火を両腕に抱え直した。


それから落ち着きなく一日を過ごして、やっと夜になる。

「今更だけど、湿気てないよな……?」

辺りは薄暗くなってきていて準備万端。だが、自分は肝心な所でも関係なくミスを連発する奴なのであって。
所謂、ダメダメ。
一時も気を抜く事は出来ない。
心配になり、抱えている花火を振ってみる。
何たって、姫ちゃんが来てくれるのだ、今回ばかりはミスする訳にはいかない。

「ツナくん、お待たせー」

その決心は姫ちゃんの姿が見えた時一層固くなった。

「ゆ、浴衣!?」

「うん。そろそろ着納めだろーから、ここぞとばかりに着てしまいました」

パクパク。
開いた口が塞がらない。
――別に呆れてるとか、そんなんじゃなくて。ただ単に見惚れているのだ。

「に、似合ってる」

「ありがとっ!」

震えて仕方がない言葉に、反応してくれる姫ちゃんの無邪気な笑顔に、益々惹かれたのは言うまでもない。

「早く始めようか」

「うん」



花火、点火




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ロズ様へ三万打フリリク企画『ツナで甘夢』でした。甘というより、仄々になってしまいました。
初々しさを出そうとしたのですが……。

また、機会があればリベンジさせて頂きたいと思います。
ありがとうございましたっ。
m(_ _)m

10月2日 灯亞

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