小説を詰めていく場所(Log) | ナノ


精一杯に


シャンクス/甘?
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何時だってあの人は私よりも先を歩いていた。

年齢差、その他云々を考えてみたら仕方ない事の様に思える。

けれど、何時も余裕のあの人を見ていると、私だけが好きみたいな気がする。それはちょっと不満でもあるわけで……今日は私から仕掛けてみることにした。

一度くらい、あたふたしてみれば良いのよ。


* * *

「ねぇ、シャンクス街行かない?」

上陸する時、頑張ってシャンクスを誘った。内心ドキドキだったけど彼は勿論、と無邪気な笑顔を見せながらオーケーサインを出してくれて一安心する。

「この髪飾り似合うんじゃないか?」

「わぁ、可愛い」

春島。
街に出て、所狭しと立ち並ぶ出店を見て歩く。店に置かれた、職人の技が光る工芸品には一層と目を惹かれた。

「……っ!」

「どうした?」

不思議がるシャンクスに首を振ってみせる。
思わず忘れてた、当初の目的。
今隣に居る彼をあたふたさせること!

詳しくはまだ考えていない――本当は思い付いていない、のだが出掛けているうちに何とかなるだろうと思っていたのだった。

そういえば……。
そこで気が付く。今日はまだ手を繋いでいないのだ。だったら私から繋いでみようか、口元が上がる。しかし、いざとなったらやはり気恥ずかしくて。

「…………」

結局、裾を軽く掴むだけに留まった。

と、不意に少し笑って何時もの様に手を繋ぐシャンクス。さりげない、こんな仕種に何時もやられてしまうのだ。

「シャンクスって何時も余裕たっぷり。私なんて……」

握られた手を少し強く握り返して、ついぼやいてしまう。徐々に熱を持ち始める顔。

「バーカ、余裕が無いのはおれも同じだ」

「え?」

その言葉に驚いて見ると、何時もの様にシャンクスは笑った。


それが彼の照れ隠しなのだと、副船長から聞いたのは船に戻ってからなのだった。


精一杯に



×End