小説を詰めていく場所(Log) | ナノ


海に託した想い


ロー/切甘
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シャボンティー諸島。

木々から発生したシャボン玉が空へと浮かんでいく小さな島。
各地のルーキー達が集まるそこで、偶然にもローと私は再会した。

彼は出逢った頃と余り変わっていなくて、何だか安心したのを覚えてる。
それから、私達は名物の遊園地に遊びに行ったり、出くわした海兵と戦ったり……。
最初は乗り気じゃなかったのに、次第に私の手を引いて歩きだす様になっていった彼には、とても笑えた。

"楽しい時間は直ぐに過ぎる"

そう言ったのは誰だったか。なんて的を射た言葉なんだろう。


* * *

「ログが貯まって暫く経つ。これ以上出航を延ばすことは出来ないの。船長の信用にも関わるってもんだし」

だからね。
さようなら、ロー。

波立つ青を背に、そう言って目の前にいる彼に微笑んで見せた。

余裕たっぷりにやってみたつもりだけど、引き攣っている頬は隠しきれていないだろうな。
気付いてるくせに指摘はしないんだから、やっぱり優しいと思う。

くるり。
ローが背中を向ける。
それだけの動作なのに、風がやけに冷たく感じた。

「姫、おれ達は海賊だ。それも船長同士……一緒には居られねぇ、次会えば敵かも知れない」

まるで自分自身に言い聞かせている様な呟き。
それは昔の昔に私が何度も割り切った事だった。

「分かってるよ」

背負うモノが沢山ある私達が共に過ごせないのは当然。今回は偶然鉢合わせしただけであって、逢えたことだけでも奇跡に近いんだから。


「……だが、な」

不意にローが振り向き、私の顎を掬った。揺るぎない真っ直ぐな瞳が眼に映る。

「?」

交わった視線の中で、彼は口元を上げて笑っていた。
「目指してんのは同じ方向だ」

新世界の果て、海賊の頂点。そしてこの世の全て。ローの言いたい事が分かった。
それはつまり――。

「次会えるのはラフテルで、かもね」

「ククッ、そりゃあ良いな」

彼は軽く私の頬を撫でると、素早くキスを落として自分の船へと行ってしまった。
一度も振り向かずに。

「……じゃあね」

遠ざかっていく彼の背中に言葉を送る。

私も船に戻らないと。
何気なく見上げた空晴れ渡っていた。それはそれは、泣きたくなりそうな蒼で。

しかし、不思議と涙は込み上げては来なかった。


(きっと何処かで、繋がってるから


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きい様三万打企画リクエストの『ロー切夢』です。
甘くほろ苦いを目指してみました。ドキドキ。
これからもよろしくお願いしますっ!



×End