小説を詰めていく場所(Log) | ナノ


何てモヤモヤ


キャスケット?/バレンタイン
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「姫ーっ!」

ただ今、春島を目指して順調に航海中。穏やかな陽射しと程よく揺れる揺り篭さながらの船。緊張感もすっかり抜けて、つい、うつらうつらとしてしまっている時に突然呼ばれた姫はその場から飛び上がった。

「なっ、なんですか!?」

見ると、キャスケットが目に星を浮かべている。取り敢えず、テンションが何時も以上に高いことだけは分かった。

「知ってるか、明日バレンタインって日なんだぜ!」

「チョコ渡す日ですよね?」

何を言い出すのかと思い、少し構えていた姫にとってそれは少し拍子抜けだった。バレンタイン、ある島発祥の有名なイベントだ。一体それがどうしたのだろうか、首を傾げる。

「勿論、船長に渡すんだろ?」

「なっ!」

気を抜いていた姫はその言葉を聞くなり顔を赤くした。あまりの変わり様にボンッ、とでも音がしそうな程だ。

「そ、それは……」

「渡すんだよな?」

押しに押しまくるキャスケット。

実は、彼は姫と自分の船長であるローの関係に何時もじれったさを感じていた。というよりもハートの海賊団の全員が全員やきもきしている。
二人が付き合ってから約三ヶ月くらい経った頃に、姫が照れながらローさんと初めて手を繋いだのだ、と話しているのを聞いた時は驚きと共に何だか感動を覚えた。今時、こんなカップルいたんだなぁとか、船長ファイトっスとか思った。ここら辺りはまだ初々しいな、とかで済んでいたのだ。
しかし、以来二人の発展は亀の歩み。世の少年少女の方がまだ進んでいる……そんな訳で、キャスケットは非常にじれったさを感じていた。

姫と言えば、首を横に振れる筈もなく、チョコを渡すことに決めたのだった。

* * *

「おおっ!」

夜遅く、使い終わった厨房をコックから借りて作ったチョコケーキは大した問題もなく完成した。柔らかそうなスポンジに散らされた金箔。材料の揃いが良すぎることから、作ろうとは思っていたんだなと気付いたキャスケットは苦笑いする。

「甘さを少し抑えて、カロリーも控え目にしてみました」

甘さはともかく、カロリーは控え目でなくてもいい(寧ろ、増量にしても問題ないだろう)と思ったが、ちゃんとローの為に一生懸命に作ったケーキ。

「いいと思うぜ! 船長喜んでくれるといいなっ!」

It's Valentine a day ago.


「あれ、ケーキはどこやったんだ?」

「ローさんの枕元に置いておきました」

「サンタさんかよ!」

「だって、直接はちょっと……恥ずかしい、し」

「まぁ、姫にしては頑張った方だよな」




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あ、あれっ? ロー夢だよね。

2月15日 灯亞.





×End