小説を詰めていく場所(Log) | ナノ


風流=ちょっと怖い


パウリー/ギャグ甘?
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アイスバーグさんから頼まれた出張先。
小さな島で、W7からは結構距離が遠いから日帰りは大変。という訳で趣のある風流な宿にお泊りしようと決めた矢先だった。


「おい、姫。この宿って……出るらしいぞ」

この縄男がとんでもなことを口走りやがったのは。

「……は?」

何が、とは敢えて聞かない。パウリーの、胸の高さで垂れ下がっている両手が意味するものはアレしかないんだろうから。

夏の話に付き物の……アレ。

「止めてくれる!? 仕事も終わったし、さぁ寝ようって時に!!」


「だって、本当らしいぞ? 何でも昔此処の女将がな……」

「うああぁわあ!!」

聞きたくない聞きたくない。

思わず耳を塞ぎ、その場に座り込む。奇声を発してしまった事を不覚に思いながらも、他の客が居ないのに安堵した。

「ああ? 姫、お前もしかして怖いのか?」

ニヤニヤ。人を小馬鹿にした様な目で見てくるパウリー。

「ハンッ、怖い訳ないでしょう!? お子様じゃあるまいしっ」

そうして各自、部屋へと向かったのであった。

* * *

「…………」

威勢良く言い放ったものの
……スイマセン、めっちゃ怖いです。

布団を口元まで引き上げる。

何が趣よ、何が風流よ。
恐怖感をただ増長させてるだけじゃないの。
竹とかザワザワ鳴ってるし、揚句の果てには障子ってやつに不気味な影落としてるしっ!
……時折聞こえる水の音とか本当に勘弁して欲しい。

私がパウリーの部屋に駆け込むには、そう時間は掛からなかった。

* * *

「パウリー、責任取ってよ!!」

襖を勢いよく開けると、スパンと小気味よい音が
響いた。

「おまっ、破廉恥だ! 夜に男の部屋に来るんじゃねぇよ!!」

どうやら就寝中だったらしく、驚いている。ざまあみろ。

「破廉恥も何も無いわよー、パウリーが変な事言うから寝れなくなったの!!!」

「ああ、アレか? 昔女将が……」

「それ以上は言うなぁあ !!」

引きずってきた枕を投げ付けると見事命中。
アイスバーグさんが居たら、ンマーなんとも見事に当たったもんだ。とか言って褒めてくれそうな程。

「……あれ? どこ行くの?」

「ソファーに決まってんだろ」

一緒に寝るとか破廉恥だ。

そう言って、移動しようとする彼の裾を引っつかむ。

「パウリーが行ったら意味ないの! 傍にいてよ」
そう叫ぶと、若干パウリーの顔が赤くなった様な気がした。
「……今日だけだからな」

「当たり前よ」

渋々と言った様子で背中合わせなポジション。
暫くの沈黙が続いた後、パウリーが口を開いた。

「……お前にも苦手なもんあったんだな」

「昔っからダメなの。火の玉とかゾンビとか……怖い話が大好きな叔父さんがいて、小さい頃よく脅かされてたわ」

どんな人でも苦手なものの一つや二つはあると思う。

私の場合、それがアレなだけで。

そもそも、私はああいう正体不明なものは大嫌いだ。訳の分からないもの相手にどうやって対処すればいい?

呪いとか……もう、ふざけるなの領域。

「へぇ。聞いた話だけどな……人の身体には少量だけ、リンってやつが含まれててよ、逸れが何かの拍子で引火した物が、火の玉に見えるらしいぜ」

「何かの拍子って、どんな?」

「…………」
「…………」

「……まぁ、何かの拍子だ」

科学者の考える事って、結構ご都合的なことが多い気がする。

「ゾンビとかは何なの?」

「……アレだ、大怪我した老人だ」

「ああ、ただの老人か」

「…………」
「…………」

「…………」

「なんか、考えてたら、余計に怖くなった」

早く寝てしまった方がいいに限ると思い、布団に潜り込む。
背中が温かいからなのか、時間的なものなのか瞼がいきなり重くなった。
これは寝れそうだ。

私はゆっくりと目を閉じた。

理屈よりも添い寝が一番っ!
(ん、おはよ)(わー、破廉恥だ!)(騒がないでよ)





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夏に相応しいお話を一つ。(?)
二人の関係はとても曖昧な感じ。
7月2日 灯亞
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×End