小説を詰めていく場所(Log) | ナノ


01


ドレーク/甘
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小さな小さな辺鄙な島の、数少ない酒場。
そこに入ってきた彼を見た時、私は即座に危ない人が来たと思った。
顔の殆どを覆っている様な黒いマスク、如何にもな傷と帽子に羽織っている服は前が全開。極めつけは彼の顔。

なんと私が立っている近くの壁に貼ってあった指名手配書その人だったのだ。
……2億2200万ベリーらしい、捕まえてやろうか。洗い立てのジョッキを拭きながらそう思った。2億だなんて普通に生きていたら目にかかることもない大金だ。一生遊んで暮らせるなんて魅力的。

しかし、それは思ってみただけであって行動に移す事はしない。私は一昔に賞金稼ぎだったという過去は持っているけれど、あれは金が入り用であっただけで、基本自分の身が可愛い平和主義者なのだ。

あまり関わらない様にしておこう。そう心に決めて、グラスを拭くことに専念した。

――それなのに、どうしたことだろうか。意外にも仲良くなってしまったのだ。

海岸線に停泊している船が目に入る。

2人で海に来るのは初めての事だった。
何時もの行動言動からは実感がイマイチ湧かなかった彼だったが、船をバックにしたドレークは、本当に船長らしく見える。

「なあ、姫……、俺と」

「ダメよ」

不意に口を開いたドレーク。
自然と彼の言いたい事が伝わってきた。間髪入れずにその先を制す。
生憎と、私は何時帰ってくるか分からない男を待ち続ける様な一途さは持ち合わせていない。平和主義者の現実主義者、何てつまらない奴だ。

何時か来る別れに備えて程よく身を引いてきた。仲良くなっていくことに嬉しさは覚えていたけれど、一線は引いておく。今だってそれは同じ事。

「貴方はログが貯まれば、直ぐにあの船で海へ出るでしょう?」

「……その時は連れていく」

ボソリと呟かれた言葉に首を傾げる。

「は?」

「欲しいものは奪うのが海賊というものだ」

ガシリと肩を掴まれて頭上で紡がれた言葉は、今度こそハッキリと耳へ届いた。
気持ちいい程の束縛感。普通ならば嫌悪しているだろう、それが酷く甘い物の様に感じる。

「その代わり、姫はおれが護る。どんなことがあっても」

「ふふっ。そうでなきゃ困るわ、私は一般的な市民だもの。……よろしく、ドレーク」
いつの間にか感化されていたらしい、と今更になって気付くけれど……どうやら時既に遅しってやつみたいだった。

控え目な彼の頑張り




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初ドレさん夢。
……難しい……、です。

3月18日 灯亞

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×End