01
ルッチ/死ネタ
――しくじったな。
おれもお前も。
目の前には紅に染まった姫が倒れている。特に、腹部からの出血が夥しい事は明らかに見て取れた。嗅ぎ慣れている筈のその臭いに、これ程嫌悪感を抱いたのは初めてで、顔を顰める。
「あ、の……ルッチさん、怒ってます?」
姫が怯えた様におれに尋ねた。
「ああ、かつて無い程にな」
「わ、わざと、じゃないんですよ?」
「当たり前だ」
そんな事あって堪るか。
軽く腹部を押すと、悲鳴を上げる姫。何回か繰り返してから手を離してやった。
「さ……最後まで気を抜くなって、何時も言われてたんですけど、ね」
「覚えておくんだな。報告書にでかでかと書いてやる」
フクロウの目に入れば、エニエスロビー中に広まるだろう。
「うわっ、我ながら格好悪い」
「…………」
既に手遅れ。馬鹿な事を言っている間にも溢れ出している血液は、止まる事を知らない様に思えた。怪我の具合から、姫も自分の状態は良く分かっているだろう。
短く息を吐き、姫の耳元へと口を近付け囁く。
「選ばせてやろう。おれか、奴らか」
「そんなの、当たり前に――」
そう言って彼女は微笑んだ。
選択肢を花束に
(最期、お前に出来ること)
×End