01
ルッチ/甘
さてさて、私とアイツは恋人同士です。
アイツの口から"好き"だなんて単語は出たことないけれど。
私が足を引っ張る事になれば、直ぐに私は消されるだろうけれど。
せめておれの手で始末してやるとか言って。きっとその時のあいつの表情は何時もと変わらないだろうね。最悪、笑顔ニヤリだ。ある意味純粋で、何よりも不純なあの笑顔。
アイツの事だから、涙で前が見えませんっ……だなんて期待できないな。
そもそも、泣くくらいなら殺んなよと思う。未練タラタラじゃあないか。漫画とかでは有りがちなシーンだけどね。
話しが逸れたけど、要するに私なんてアイツにとってはその程度ってこと。
だから可笑しいんだ、こんな状況は。
ある筈が無いんだからさ。
「どう、して」
「……バカヤロウ」
ほら、ね。
可笑しいでしょう。
アイツ――ルッチが私の前に倒れてるなんて。それも血まみれで。
うん、あれは私が悪かった。窮鼠猫を噛むとはこの事だったなんて今更学ぶんだから。鉄塊も間に合わなくて、そこにルッチが飛び込んで来た。何でルッチも鉄塊してないのよ。
鼠さんは既にぼろ雑巾にしてやった。視界の端で転がっている。
「馬鹿はどっちよ、バカヤロウ……ほって置けば良かったのに」
頬を伝うものなんて無視してやる。
嗚呼、傷だらけのルッチの背中にまた傷が増えてしまった。罪悪感。まあ、死にはしないだろう。暫くは動けないとは思うが。
「バカヤロウはお前だろう。お前はおれの何なんだ」
……え? 何それ。
思わず笑ってしまった。
おれはお前の何なんだって台詞は聞いたことあるけれど、その逆だなんて。
ルッチは、まさか笑われるとは思ってなかったのか、眉を寄せている。
一頻り笑いこけた後、涙を拭う。
「そうね、貴方の恋人だったわ」
What am I for you?
(さてと、救援呼ぶわよ)(…………)
一見そこまで甘くないように感じますが……相手がルッチさんなので、これが精一杯ですっ。
この書き方が一番書きやすいことに気付きました(ρ°∩°)。
8月12日 灯亞
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×End