小説を詰めていく場所(Log) | ナノ


01





『流魂街出身の私と、死神の修兵……出会えたのって、すっごい偶然だよねー』

『或は、運命とか』

『うわっ、修兵くさい!』

優しく降り注ぐ木漏れ日の中、顔を見合わせて苦笑いする。

幸せ過ぎる程に幸せだった。しかし、ずっと一緒にいることは叶わない。

尸魂界に導かれた魂達は輪廻の時を流魂街で待つ。それは彼女も例外ではなく、つまり彼女が輪廻の輪へと迎えられる時が、別れの時。

いずれ、離れ離れになると出会った瞬間から決まっていた。

だから、会える時間を半ば無理矢理にでも作って、くだらない話なんかをして、将来の話で盛り上がって――普通の恋人と変わらない日々を精一杯おくってやろうと決めた。しかし、永遠なんてものは存在しない。

『規定の時間が過ぎました』

忘れた頃、唐突にやってきた別れ。
ついに来たのだ。覚悟はしていた筈だった。流魂街にある彼女の家から外を眺めると出会った頃と変わらない、五月晴れの空が発光していた。眩しい光が滲み、見ていられない。しかし、彼女は、そんな中に浮かぶ雲を見上げ、目を細めていた。

『そろそろ、行かなきゃね』

送り出す役目を担う者達が隣の部屋で待機している。待たせちゃ悪いよ、と縁側から腰を上げる彼女。その手を咄嗟に掴んだ。

『絶対に、何百年かかっても、お前を探し出すから』

俺に見つけ出されるその時を想像したのか、彼女はとても嬉しげな様子で。

『次に生まれ変わった時、全ての記憶は消えてるけど……それでも私は修兵の傍にいたい。少しくらい強引でもいいんだから、絶対見つけ出してよ」

彼女は泣きもせずに、綺麗に笑った。

『ああ、安心しろ』

小指と小指とをしっかり絡み合わせる。赤い糸ってやつが本当にあるのだとしたら、何があっても切れないで欲しい、涙を流しながら――そう願った。





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