01
ロイ/甘
姫がイーストシティに戻ってきた、と報告を受けたのは数日前のことだった。
「姫は一体どうしたんだ」
「それは大佐が良く知っておられるかと」
ロイが独り言の様に呟けば、返ってきたのはリザの手厳しい言葉であった。
決して表立っては出さないけれど、姫を随分と気に入っている彼女は、姫に中々会えないことに苛々しているのだろう。その原因が自分の上司だとあっては尚更の様であった。
「確かにそうだな」
悪びれた様子もないロイは片手でペンを回した。間違いなく自分の、あの行動のせいであると自覚している彼は思い出すだけで胸に広がる甘さに口元を吊り上げるている。リザとは対照的な表情。
俗に言う、世間の女性達を夢中にさせるそれよりも自然な、心底楽しくて仕方がないとでも言うかの様な笑みを浮かべていた。
彼にとってもはや机の上の書類なんて問題ではない。
「しかし……そろそろ報告書を出して貰わないと困りますね」
そんな上司を見兼ねてか、あくまでも穏やかに――しかし伝えたい事は明確に伝えるリザ。
「何、律儀な彼女のことだ。心配せずとも、どうにかして持って来てくれるよ」
凄い努力が必要になるだろうが、と心の中で付け加えたロイは上機嫌にクスリと笑った。
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