02
それは、突然だったが直ぐさまに反応して地面へとへばり付く。次に顔を上げた時、あの化け物は消えていた。
「お前、大丈夫か?」
ずいっと、眼前差し出された手。素直にその手をとると、助けてくれた人――彼の顔がよく見えた。真っ先に目を引いたのはその顔に書かれた"69"の数字。そして、大きな傷痕が印象的な人だった。
「な、なんとか」
「……姫?」
視線が交わった瞬間、彼の目が見開かれた。何で私の名前を知っているの? 初対面だよね、首を傾げる。
「お前、今幸せか?」
私が少し不思議に思っていることに気付いたのか、その人は取り繕う様にそう聞いてきた。いや、取り繕うには可笑しな台詞だけど。
「え、まぁ一応」
得体の知れないものに襲われた直後、こう答えるのも変な話かも知れないが、普段の生活は至って平凡で平和。今だって助かったんだと言うことを考えてみれば、運が良かったと思えるし、声の事はそうだが悩みと言うほどの悩みでもない。うん、私は充分幸せだ。
「そっか、だったら良いんだ。悪いな、変なこと聞いちまって」
そんな私とは裏腹に彼は何処か悲しげな表情。その顔は脳裏に焼き付いたまま数日は離れることが無かった。
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