小説を詰めていく場所(Log) | ナノ


02





「しかし、こんな日にも真面目に仕事する恋次副隊長は偉いと思いますよー? 世間はチョコ色だというのに」

「あぁ。ばれんたいんって奴だろ? 現世の風習だよな。隊員達がやけに浮足立ってやがる」

"バレンタイン"
主に現世駐在の任に就いたことのある死神達によって、ここ数年のうちに爆発的に広まった。

「私もばれんたいん好きですよ」

「? お前はやる方じゃないのか」

人にプレゼントするのが趣味だとかいう奴は稀に存在するが、まさかそんな訳がない。眉をしかめると、姫は俺の気持ちを読んだかの如く人差し指を横に振った。

「甘いですね。ばれんたいんが終わった何日かの間は売れ残ったチョコレート達の大特価セールが開催されるんですよ。チョコ大量ゲットのチャンス」

拳を握る姫。

「……何て色気のねぇ奴だ」

「そんなこと言っちゃって。……ちゃんと恋次副隊長殿には準備してあるというのに」

俯いたために良くは聞こえなかったが、不満げに呟かれていた声に疑問符を飛ばす。
姫は暫く炬燵の中でゴソゴソ何かをいじくっていたが、やがて、ジャジャーンといった気の抜けた効果音と共にそれを取り出した。

「えっ、……お、おう。ありがとな」

いきなりの不意打ち。
予想もしていなかった事に声が吃ってしまう。

「どーいたしまして」

姫はそんな事は気にせずに、やはり気の抜ける様な笑顔を浮かべてチョコレートを手渡した。


Happy Valentine!
(……待てよ。あいつ今、これを何処から出した?)




2月14日 灯亞.





End