02
「そういえば、私の好きになった檜佐木修兵さんはそういう男でしたね」
「今更何言ってんだ」
「だったら、もう良いです。ずっといつまでも忘れないで下さいよ。未練タラタラで生きていればいいんだ」
ため息を一つ吐いて困った様に言う姫。
「上等だな」
少しの沈黙を間に挟む。
「仕方ない、副隊長が有り難く覚えていて下さるのなら、私頑張って生まれ変わることにします。また大好きな修兵さんの元に現れてみせます!」
「ああ、待ってる」
素早くキスを落とすと、案の定姫は真っ赤になった。暫くの間、照れ隠しなのか俺の胸元に顔を埋めていた姫だったが、落ち着きを取り戻して、また視線を交わらせる。
突如、白い霧に包まれた。
最後に目に映った姫の姿は、まだ少し赤いままで笑っていた。笑っていて良かったと思う。
ずっと傍にいたかったし、誰にも渡したくなかった。これからも傍にいたいと思えたし、誰よりも大切だった姫。
それはやっぱり、この後も変わらないだろう。
「……ありがとう」
――声が、聞こえた。
次に目を開けると、そこはもとの隊舎庭だった。
何も咲かせない樹の幹を撫でる。さっきは気付かなかったが、その枝の先には既に次の春への準備が整いつつあった。
「わざわざ夢にまで出て来たんだ、本当は何か残したかったんだろ?――姫」
俺は次に進めそうだ。
その先にお前がいるから。
……書いてる自分が照れるな、これ。
1月19日 灯亞.
←End