小説を詰めていく場所(Log) | ナノ


03



「何で謝るんだよ。寧ろ責められるんなら俺の方だ。……俺が判を押した」

予想以上に虚が多かった、情報局の調査解析が甘かったと言い訳するつもりはない。結果的に俺が姫を一人で行かせたのだから。しかし姫は泣きながら首を横に振ってくれていた。修兵さんは悪くない、と。

「私……残される人の気持ちを知っているのに、貴方を残して逝ってしまった」

姫が死覇装の襟を掴む。その手は弱々しく震えていて、今にも消えてしまいそうで恐かった。此処が夢みたいな場所であるのだと聞いてしまったのでそれは尚更だ。醒めてしまうのが恐い。思わず――この場所で会った時の姫が最初俺にした様に、その手を握る。そうしてお互いの存在を確かめ合った。しかし姫の震えは止まらない。目の前の者の存在が、か細いものへと変えられていくのを感じた。
どうすればいい? 狼狽していると、不意に姫の震えはピタリと止まった。意志の篭った瞳と視線が交わる。

「修兵、さん……お願いです。私のことを忘れて下さい。私は何も残して逝きたくないんです」

be continue...



End