小説を詰めていく場所(Log) | ナノ


02



辺りを見渡しながら尋ねる。記憶に無い場所だ。何処かしらか不思議な雰囲気が漂っている。俺の質問に姫はどうやら困ったらしい。言葉を選んでいるのか、少し黙った後にゆっくりと口を開いた。

「平たく言えば……修兵さんの夢の中、ですね」

余りの事に言葉を失う。
だとしたら、姫がもう居ないセカイがやっぱり本当なのか。何故こうして話が出来るのか。ならば此処にいる姫は自分の脳が勝手に作り出したものでしかないのか。
色んなことがまぜこぜになる。

「どうして……?」

情けないことに、それだけしか言えなかった。

「えっと、何も言えなかったのが気掛かりで出て来ちゃいました」



色々な質問が絡みあったそれを、姫は姫が此処に居る理由についてだと解釈したらしい。罰の悪そうな、悪戯がばれた時の子どもの様な表情をしながら笑った。

「そう、か」

やはり一番否定して欲しかった事実は変わらないものであったらしい。声が掠れるのを自分でも感じる。

ふと姫が目を伏せた。睫毛の影が顔へと落ちる。久々に見た、涙を堪える時の姫の癖。まだ姫が新人の頃で俺と恋人同士になる前に何回か見たことがある。

「修兵さん、……ごめんなさい」