02
「修兵さん……?」
渇いた喉から絞り出した声は酷く掠れていた。怖いし、息苦しいし、倒れてしまいそうだけど。
そんなことよりも、何よりも悲しかった。虚の言葉に傷付くなんて。
「だったら残念ね。あの人は、来ない」
代わりの人なら来てくれるかもしれないし、来ないかもしれない。でも修兵さんは来ない。
「あんたを生かしておく意味がないってこと?」
「……えぇ、そういうこと」
逃げられない。
だったら、この虚に最高の侮蔑と蔑みをあげようか。顔は引き攣ってるかもしれないけれど、足もどうしようもない程震えているけれど、精一杯に嗤う。
残念でした、と。
「馬鹿な女、今自分で自分の首を絞めたのよ?」
嘲笑が刺さるけれど、そんなこと構わない。
何もない、何もない、空っぽの頭の中で響いたのはあの声だった。
『姫』
――不意に聞こえた。
「姫!」
現実とリンクする、引き戻されていく。
「嘘。修兵、さん?」
声と声とが重なった。
「伏せろ、姫!」
涙と共に消えたのは虚。
――現れたのは、大切な人。
何で気が付かなかったのだろう。
今まで何度も呼んでいてくれてたのに。
「修、兵さん。っ……ごめんなさい」
「怪我、ないか?」
肩には望んだ温もりが伝わっていた。
5話予定だったけど、長いので終了。
今度こそ、ラストに入ります。
9月8日 灯亞.
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