02
「……この馬鹿野郎がっ」
もう聞き慣れてしまった声が瞬間に響く。気が付くと、怒号と共に呆気なく虚が消えていた。軽く既視感を覚える。
「何挑発してんだ! お前が敵う相手かどうか分からない訳じゃないだろ」
視界に映ったのはやっぱり修兵さんだった。凄い剣幕で怒鳴られる。踏んだり蹴ったりで、今日は最低な日。全くついていない。
「べ、別にあなたには関係ない」
咄嗟に口をついて出た言葉。
修兵さんは酷く傷付いた様な顔をした。ハッと息を飲んだけれど言い終わった後には遅すぎた。嗚呼、本当に今日は最低な日。なんでそんな顔するのよ。
――こんな事が言いたかった訳じゃない。
私は馬鹿だ、修兵さんは助けてくれたのに。罪悪感に胸が締め付けられた。
直ぐに謝ろうとして口を開く。
「ご、ごめ……」
その瞬間。
「関係ないこともなくない、って言ったらどうする?」
ふいっと俯き、表情が分からなくなってしまった彼さんが遮る様にそう呟いた。
「今のお前にとっては他愛ない話だ。聞きたいか?」
――次に見えたのは、今までにないくらいに真剣な修兵さんだった。
8月22日 灯亞.
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