03
これでも一応お客さんなんだから、お茶でも出した方がいいのだろうかと、ふと思う。珍しく玉露が置いてあった気がする。お茶菓子というものが良く解らないが羊羹とかが無難だろうか。年齢的に煎餅は合わなさそうだし。ケーキなんて洒落たものは今我が家にはない。お茶、出そうかな。
しかし、それよりも何よりも気になることがあった。よし、後から出そう。
「一つ質問したいんですが……」
「まぁ答えられる事には答えてやるよ」
「死神って何ですか? 貴方の名前は? この前の化け物って一体何者? なんで着物の袖破れたままなんですか?」
「俺は檜佐木修兵。この前の化け物は虚(ホロウ)ってので、死神は、主にそいつらと戦って人間を守るのが仕事だ」
「……ふむふむ」
一つじゃないのか、という点は悲しくもスルーされた。そして袖のこともスルー。
返ってきた回答は分かったような、分からないような。やはりピンと来ない。
取り敢えず、名前は分かった。
そして、死神というのは一般的なイメージのものとはかなり違っていて、どうやら人を守っているらしい。平たく言ってしまえば、正義の味方ってやつなんだろう。悪い奴らが虚。
そして某児童向けアニメで言ってしまえば、死神が有名なパンのあの人で、虚が有名なバイキンのあの人ってこと、で良いのか……? 難しいな。
「あ、あともう一つ質問」
「なんだ」
ついでに聞くだけ聞いておこうと口を開く。聞くは一時の恥、聞かぬは一生の恥と言うではないか。聞いたとしても日常生活には全く関係のないことだし、知らなくても構わないことだけど。気になるし。
「私、修兵さんと以前どっかで会いましたか?」
「気のせいだろ」
笑みが急に消える彼。
何があったのかは知らないが、何かあったのだと察した。床を一瞥して、横を向いた修兵さんの表情(かお)は酷く寂しげだった。
be continue...
8月16日 灯亞.
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