小説を詰めていく場所(Log) | ナノ


02



「で、何で此処?」

お前の家だろ」

如何にも、此処は私の家。更に付け加えてみれば私の部屋だ。それは分かっている。私が聞いたのは何の理由があって私の家に来たのかってこと。って言うか……どうして私の家を知っているんだ? 首を捻るが答えは思い付かない。尋ねたい気もするけど、それと同じくらい答えが恐ろしい気もしたので、敢えてこれは聞くまい。

「どうしてわざわざ、移動?」

それと代わりに別の疑問をぶつけることにした。

「俺は死神、普通の人間には見えねぇ。あの場所であのまま喋ってたらお前、ヤバい奴だと思われるだろうな」

やはり彼はあっさりと答える。
恰(あたか)もそれが当たり前の様に答える彼。私にとっては異常なんだけど。

「はあ」

不意に、なんだか彼と初めて会った気がしないことに不思議を感じた。人見知りはしないタイプだけど、それを差し引いても随分と饒舌だ。間違いなく、彼と初めて出会ったのはこの前、化け物に襲われた時。

「おい、気の抜けた返事するな」

しかし顔に皺が寄っている彼とは、やはりあの時が初対面だ。会っていたとして忘れる訳がない、こんな特徴満載大氾濫の人は記憶の片隅なんかでなく、しっかりとど真ん中に記録される筈だ。

「いや、いきなり死神ですって言われても、ああそうですか、みたいな。鎌を持った類のあれですか? ……みたいな」

ピンと来ないんだから仕方ない。彼の表情がどんどんと、しかめっつらに変わっていくが私はごく普通に生活している普通の女子高生。死神と聞いたら、あのタロットカードによく描かれている死神を想像するのは当たり前だろう。

「一応俺は前、お前を助けたんだけどな」
「あっ! その節はどうもありがとうございました」

「お、おう」

そういえば、あの時は本当に助かった。
思い出して深々と礼を言う。それが拍子抜けだったのか、彼は微妙に吃っていた。生まれる僅かな沈黙。