02
「何時か、私を庇って死にそうって話」
次は呟きなんかじゃない、私は彼に面と向かって言った。ただの自惚れ、とは割り切ることは出来なくて。夢で何度もみたそれは勿論、須らく悪夢。私だってずっと一緒に居たい。ローをずっと傍で見ていたい。でも、どう考えても私は足手まといだ。雑用しか出来ない。戦闘の時になると真っ先に狙われれる立場にいるくせに誰よりも非力。
「おれがそこら辺の奴らにやられると思うか?」
「それ、は……」正直、そんなの分からない。偉大なる航路を目の前にして積もり積もる不安。信用と楽観は違う。偉大なる航路に入れば、どんな敵がいるか分からないのだ。一度負けてしまえば元には戻れない過酷な航路。そんな中で勝率を下げる訳には行かない。
「お前はおれの女だ。大人しく守られてりゃあいいんだよ」
「そんなんじゃダメなのっ!!」
イラついた口調、あんまりの言い方に涙がこぼれ落ちた。敢えて、拭かずにローを見る。生まれた沈黙。息苦しくなる程のそれ。
「…………」
「…………」
長い溜息を吐き出して、今度はローが呟いた。帽子に手をやり深く被る。表情は、分からない。
「お前はそんなに船から降りたいのかよ」
空気が変わる。
船から降りたい、なんて思ったことない。あの場所は心地好い。ローの隣は安心する。文句だなんてある筈がない。
だからこそ、自分の手で壊すようなことになったら、と考えてしまう。
でも、そんな不安を抜きにして、正直に言うとしたら。
「……嫌だ」
「そうか、だったら傍にいろ」
有無を言わせない、しかし先程と打って変わって穏やかな声色。
気が付けば、頭の上に手が置かれていた。
「いいかおれは、ひとつなぎの大秘宝を目指している。女一人守れない奴なんかじゃ手に届かない程の宝だ」
ローは、とても狡い。
「もう、勝手にどっか行くなよ」
そんな事言われたら、離れることなんて出来なくなるじゃない。
――浮かべた表情は、泣き笑いだった。
* * *
「……ってな事があったよね」
「知らねぇな」
「またまたそんな事言って、覚えてるくせに」
「姫ー、修業するぞー!」
「ほら、ベポが呼んでるぞ」
「分かってる。今、行きます。師匠っ!」
それぞれの誓い
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