掴んだその手 | ナノ



掴んだその手4

目を瞑ると浮遊感と同時に空気が変わり、召喚された場所に移ったのが分かる。
その場には人間が多くいるみたいで、多数の息を呑む様子が分かった。
恐る恐る目を開くと、そこはどこかのお城みたいだった。ちらりと視線を動かすと凄く高い天井と、それから伸びるようにして支える太く白い柱。
キラキラと輝く照明のようなものは、魔術で動いているのかな。ガラスに反射して部屋全体を照らしてる。
そしてなにより、僕をじっと見ている人に目を奪われた。

「ようやく、応えてくれましたね」

ふわりと笑ったその人は、月のような人。
美しく淡いクリーム色の髪は背中まであり、緩く編んで流されている。
紫の瞳は柔らかく細められ、端整な顔立ちを一層引き立たせていてとてもきれい。
その装いからかなりの地位にいる人だということが分かって、再び緊張してしまう。

「あ、あのっ…」
「アルバス殿!これはどういうことかね!?」

とにかく挨拶をしなければと意気込んだ僕の声を遮るように、横のほうから怒鳴るように恰幅のいい男の人が割って入った。

「最初に来た高位精霊を追い返すなどあり得ないことをし、何度も召喚をやり直すなど前代未聞!しかもその後も中位精霊まで追い返し、最後が"こんな"精霊とは!」
「……、っ」

ずきりと胸が痛む。
"こんな"なんて言われても悲しいけど否定できない。基本的なことは出来るけど、やっぱりまだまだ未熟な僕だから。
そして何より、こんなに僕を求めてくれた人が責められているのが申し訳なくて。でも、最初に高位精霊様が来たってどういうことだろう……。

「黙りなさい」
「なっ……」
「今は大事な儀式の最中です。下がりなさい」
「伯爵の私に向かってなんという口の利き方だ!王宮筆頭魔術師だろうが、お前はただの子爵だろう!」

俯いていると、月の人――アルバス様って言うらしい――が鋭い口調を放つ。
はっと顔を上げると、怒りで顔を赤くした男の人が唾を飛ばしながらアルバス様に向かって指を差す。

ちょっと待って!王宮筆頭魔術師って、魔術師のトップってことだよね!?
しかもただの子爵って、子爵ってだけで十分凄いし、そんな凄い力を持つ人を助けることが初めての仕事なんて、レベルが高すぎるよ……。
 
 
(121225)



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