掴んだその手 | ナノ



掴んだその手3

――異変は突然だった。

ゴウッとかなり強い突風が、僕の目の前で渦みたくなって現れた。
その強さに顔を腕で庇いながら、薄目を開けて見ていると。

「……リアトル、さま?」

青褪めた顔色をしたリアトル様が、呆然と立っていた。
早すぎる帰還と、その様子から何かがあったのだと思う。
異変を感じた他の精霊達も集まってきて、最後に高位精霊様のラウス様が仕方なさ気にため息をつき前に出てきた。

「だから言っただろう、リアトル。"二度目はない"……と」
「……ラウス様、」

震える身体を自分の腕で抱き締めていたリアトル様は、ラウス様を愕然とした表情で見上げた。
話が分かっていないのは、どうやら僕だけのようで。他の精霊達は同情のような表情でラウス様の言葉に頷いている。

「……えっ!?」

話が見えず困惑してると、今日二度目となる召喚の魔方陣が僕を中心に浮かび上がった。
ただいつもと違うのは、その陣からふわりと細い布のようなものが出てきたこと。
勿論それは本物ではないけど、でも肌に触れる感触は確かにある。

「フィン!早く召喚に応じるんだ!」
「は、はいっ」

ラウス様のあまりの剣幕に慌てて陣を展開させた。
……初めてのことに、この人の召喚に応じることへの不安が募る。何度も僕を呼んでくれて嬉しい。だけどなんで、そんなに僕ばかり?あなたなら、僕の弱さなんてよく分かっているはずなのに――。


(121225)



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