掴んだその手 | ナノ



掴んだその手

精霊界では、人型を取れるようになったと同時に力ある者達へ無差別に属性・位階・力をコンタクトで送る。
力ある者とは魔力を持つ者のことを言い、コンタクトとは一種のアピールのことである。
それら三つを感じ取り、力ある者は精霊を召喚するのだ。

力ある者に召喚され、契約するということは精霊にとってすごく名誉なこと。
だから精霊達はとにかく一生懸命コンタクトする。特に低位精霊と言われる力の弱い精霊達は。
僕達が力ある者を恐れることはない。何故なら契約したと同時に、双方に誓約が課せられるからだ。
しかも力ある者への誓約のほうが圧倒的に重い。それに精霊が召喚主を拒絶した場合、精霊は強制的に精霊界へ戻ることができるから。だから安心して召喚に応じる。

精霊は力ある者へ必死にコンタクトを送るが、力ある者は必ずしも選んだ精霊を召喚出来る訳ではないということが重要なところ。
力ある者が精霊に請い、それに精霊が応え名前を言えば契約は成立する。
逆にいくら請われようとも、精霊が拒否し続ければ永遠と契約は成立しない。
例えば、魔力の少ない者が精霊を召喚しようとして、力が弱いからと拒否した場合とか。
ただそこで、別の精霊がその人間を気に入った場合代わりに呼び掛けに応じることが出来るというのも、特徴のひとつだったりする。

力ある者にはその者の属性色・力が分かる波動があり、それらを判断し全ては精霊による意思で決まるのだ。


「水の、」
「はい」

中位風精霊のリアトル様に呼ばれ、頭を下げる。
僕はフィン。水属性の低位精霊。
今まで誰からも召喚されたことがないため、名前さえ呼ばれない精霊。
属性の「水」が名前とされ、精霊達には落ちこぼれと呼ばれる存在。

「今日は"まだ"なの?」
「……はい」

綺麗な翠色の髪を靡かせ、愛らしい顔で見下してくるリアトル様に頷くとすぐに去ってしまった。
誰からも呼ばれたことがない、というのは少し語弊がある。
実は何度か呼ばれたことがあるのだ。それも、かなり凄い魔術師から。
今までの誰よりも強い力と、マーブル模様に輝く様々な色。
どの属性精霊とだって、高位精霊様とだって契約できるはずのその人から呼ばれたのだから、最初はかなり戸惑った。
だけど、召喚する精霊を間違うはずがないので、その人が僕を呼んでいるのに間違いなかった。




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