掴んだその手8
そろりと視線を横に動かすと、騎士さんとかローブを着た人が何人か必死に僕に向かって頷いてる。
これは僕に止めてくれって、言ってるんだろう、な……。
「ランウェル様、」
「どうしました?」
「あの、あの人の氷解いてあげてくれませんか…?」
自分でも情けない顔をしてると思う。
でも僕には最上級魔法に対抗できる力なんてないし、お願いするしかできないから。
「何故?あの男はフィンに酷いことを言ったんですよ?私は許せません」
「それは、そうなんですけど……、………あ!僕、ランウェル様が使える魔法、もっと見たいんです!だから早く、あの人の魔法解いて他の見せてください!」
「……私の?」
「はい!僕はご存知の通り未熟で弱い精霊です。だから使える魔法が少なくて……ランウェル様みたいな魔術師様と契約できるなんてすごいことで、えっと……だから、勉強させてください!」
お願いします!というとランウェル様は一瞬無表情になったあと、輝かしいばかりの笑みを浮かべて指をパチリと鳴らした。
「フィンはとても勉強熱心なんですね。そうですね、今はフィンとの時間を大切にしなければ。………こんな男などいつでも始末出来るのですから」
「……?はいっ」
最後のほうは聞こえなかったけど、どうにか魔法を解いてくれたみたいでよかった。
意識を失っている男の人は、壁側にいた騎士達が連れて出て行った。
ふわりとランウェル様の香りがしたと思ったら、僕の左手はランウェル様の手と繋がれていて思わず顔が赤くなる。
「陛下、こちらが私の精霊です。こうして役目は果たしたのですから、もう宜しいですね?」
「……ああ、もう良い。下がれ」
「では、失礼いたします」
疲れたように陛下が手を振ると、ランウェル様が頭を下げて出口へ向かう。
その際、ちらりと振り返ると王妃様は何だか楽しそうに笑っていて、しかも目が合うと手を振ってきたので反射的に振り返した。
(121225)
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