鷹の眼 | ナノ



04

五年前、両親が亡くなったときに涙が枯れるほど泣いた。
どうして置いて行ったの、どうして連れて行ってくれなかったの、どうしてどうしてどうして。
葬儀が終わり、誰もいなくなった部屋で俺は馬鹿みたいにどうしてと繰り返し泣いた。
あのときに、もう一生泣くことはないと思った。それほどまでに涙を流したと思ったから。
だけどまた独りになるんだと、おじさんに捨てられてしまうと思った途端、どれだけ暴力を揮われようが機能停止していた涙腺がぶわりと崩壊した。

「お前ら!なんてこというんだよっ」
「智は心配しないで?」
「お前は俺に甘えてりゃぁいいんだよ」
「ちょ、直人!どこ触っ……やめろって!」
「「かいちょー抜け駆け禁止ー!!」」
「っは、いい気味だ」
「さっさと退学の準備してきたらどうです?ああでも、あなたの行く所なんてどこにもないんでしたね。ご両親、いないんですもんね?」

次々と聞こえてくる暴言。最後の副会長の言葉に、俺は更に溢れる涙を拭うことも出来なかった。

「え!宏樹両親いないのか!?」
「亡くなったんですよ、事故で。親戚もいないらしいですしね」
「そうなのか!宏樹っ、そんな泣いてばっかじゃダメだぞ!そんなだから宏樹は友達もいないんだ!!ほら、今謝ったら許してやるから!そしたら直人も退学取り消……グァッ!!」

力の入らない体で、それでも何とか立ち上がると喚いていた転校生を出来る限りの力で殴り、その反動で副会長も殴った。俺がそうすると思いもしなかった転校生は床に倒れ、副会長は倒れはしなかったがよろめき一歩後ずさった。 

もう、いい。おじさんに捨てられるのは、嫌われるのは辛いけど。
それでも、こんな奴らに反論も反撃もしないまま退学になるくらいなら、俺は自分のしたことを後悔しない。
最低だと喚く転校生を慰める双子会計と爽やかくん。俺を殴る副会長。倒れた隙を狙って蹴りを入れる会長と不良に。俺は、ただ耐えながら、おじさんへと謝罪を繰り返した。


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(121020)




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