03
「――……き! 宏樹!!」
「え、あ……痛っ」
もくもくとうどんを食べながら考えていたから、転校生の声を聞き逃していたらしい。
思い切り肩を掴まれ、それが爪が食い込む程の力だったために放してくれるように頼むが、「人の話を聞かないなんて最低だ!」と泣き出し更に力が強くなり、悪循環。
痛いし五月蝿いしでもう殴ってしまおうかと思った、瞬間。
「ぁ……っつ!」
バシャッと熱い何かを頭からかけられた。
予期せぬことになんのフォローも出来ず被ったそれは、どうやら俺の前に座っていた生徒会長の味噌汁のようだ。
転校生はいつの間にか副会長に保護されていて、被害は俺だけ。
味噌汁は時間が経っていて少しは冷めていたけど、熱いものは熱い。
食堂は一瞬にして静寂から大きなざわめきになり、書記は目を見開き、厨房のほうからは俺の料理を持ってきてくれたウェイターさんが顔を真っ青にして厨房に向かって何かを叫んでいた。
「てめぇ、いい加減にしろよ。お前を退学にすることなんて、俺には簡単に出来るんだぜ?」
「「ていうかーもう退学でいいじゃーん!」」
「智を泣かすクズなんてこの学園にはいらないですからね」
生徒会役員、特に会長はこの学園でトップを誇る御曹司だ。会長が一言言えば、しかも甥を溺愛している理事長だから俺は一発で退学だろう。
けど、それは困る。だってここはおじさんのお陰で入れたんだ。おじさんが迎えに来るって言ってくれたんだ。待ってろって、そう言われたのに退学なんてなったら……失望されてしまう。
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(121020)
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