鷹の眼 | ナノ



プロローグ

俺、坂下宏樹は12歳のときに両親を事故で亡くし天涯孤独になったことと、通う高校を除けば、頭脳・容姿・家柄その他諸々全てが普通の男だ。
そんな俺が通っている楠森学園はお金持ちのお坊っちゃん達が通う全寮制の男子高校で、それはそれは馬鹿高い金を払って入学する、庶民には縁のない学園。
なのに何故、庶民中の庶民な俺が入学できたかというと、俗に言う“足長おじさん”のお陰だ。
両親を亡くし、親戚中をたらい回しにされた後入所した施設でやる気もなく過ごした二年後、突如として足長おじさんは現れた。

いや、実際に会ったことも話したこともないんだけどね。
院長先生が言うには、ふらりとやってきたその人はぼうっと庭で座り呆けたままの俺を見て何故か気に入り、援助を申し出てくれたとか。
今は身内でごたごたがあるため迎えられないが、数年後には迎えにくる。そのときまで待っているように。――そう言って男は楠森学園のパンプレットを置いて帰ったという。
その話を聞いたときは理解が追いつかず、だけど拒否権も、拒否する気もなかった俺はパンフレットをじっと見て、一年後の入試に向けて死に物狂いで勉強を始めた。
こんな平々凡々な俺を引き取る男がどんな人間なのか、何故大金を払ってまで高校に行かせてくれようとしているのか、何か企みがあるのか。そんな考えは暗闇の中へ放り投げた。

とにかく勉強、勉強の毎日を繰り返した。俺は馬鹿だったけど、でも人間がむしゃらにやれば出来るもんだ。
見事外部生として入学した学園で、俺は久しぶりの学生気分を満喫していた。


――あの、嵐の転校生がやってくるまでは。


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(121014)




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