鷹の眼 | ナノ



28

自ら鷹峰の駒になると言ったあの七人の家には、簡単に話しがついた。
誰だって命は欲しい。馬鹿息子達の各家では色々あったようだが、結局は全員が頭を垂れた。
分家の人間(元書記)のことはまだ報告は上がっていない。ただ順調だ、ということだけは聞いたが。
宏樹の目に晒さないよう弾除けに使うには、どうすればいいか。狸爺達のこともあり、面倒なことばかりだ。
夕飯までまだ時間があるが癒されに行くことにしよう。さっきまで醜い顔を見ていたからか、無性に宏樹の顔が見たい。
 
静かに寝室のドアを開けると、小さな寝息が聞こえてくる。
そっと近づきベッド脇に座り見ると、余りある大きさのベッドの中で小さく丸まって眠っていた。
顔に掛かる髪を撫でるように避ければ、覗いたあどけない寝顔に笑みが零れる。
宏樹に出会ってから、自分でも信じられないほど感情が溢れて止まらない。
生まれて此の方、こんなにも笑ったことはなかった。
自分の家が特殊なのは物心ついた頃から教えられていたし、長男としてこの家を守るようにも言われていた。だから常に人の感情や表情を観察して過ごしたし、決して舐められることのないよう全てやり通した。
そうしている間に鬼と呼ばれ、感情がないと言われるようになり、遂に当主となった。
 
「これからも五月蝿い連中がどんどん出てくると思うが、心配することはない……」
 
少し赤い頬に触れ、ぬくもりと柔らかさに安心する。
宏樹を虐げていた人間はもういない。宏樹に言うつもりはない上に、元凶は一生現れないのだから宏樹に気づかれることもない。もし聞かれたら海外に飛ばしたとでも言うことにしよう。
もしもまた高校に通いたいと言うのなら、別の学校に入学できるよう手続きをしてやる。本当は閉じ込めて、ずっとしまっておきたいが泣かれ、嫌われでもしたら自分が何をするか分からない……。
 



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