鷹の眼 | ナノ



27

甥を入学させたことを鷹峰に報告せず、その甥が起こした器物破損や暴力行為などを隠蔽。
生徒からの被害報告を無視し、逆にその生徒らを理由もなしに停学・退学にした。
問題行為ばかり繰り返す馬鹿は、いらない。
 
「しかも、甥は一人の生徒を制裁のスケープゴートに仕立て上げた。幸い一般生徒からの制裁は微々たるものだったが、あれが無意識だというのなら尚更性質が悪い。そんな危険人物を本来受けるべき試験を受けさせず、報告もなしに入学させたのだから当然だろう」
「スケープゴートなんて!あの親なしが勝手にあの子に付き纏っていただけで、あの子はっ」
 
ガンッとテーブルを蹴り睨めば黙り込み、息を呑んだ。苛々と煙草を銜え火をつける。
所詮屑は屑。言うことも思考も同じで反吐が出る。

「今更喚いてんじゃねぇよ、これは決定事項だ。お前らに拒否する権利も反論する権利もない」
 
後ろにいた芝に視線で元凶を連れてくるように言う。ギリギリと奥歯を噛み締め耐えなければ今すぐにでも殺してしまいそうだ。
すぐに戻ってきた部下を引き連れた芝が、猿轡をされて尚五月蝿い智を楠森の傍へ放り投げる。
 
「智!なんてことをッ……」
 
芝と間宮を筆頭に、部下達が猿轡を外しに掛かりながら睨んできた楠森を囲む。
鷹峰に"代々"仕えてきたのにも関わらず、こいつも現状を理解していないらしい。立ち上がり近づけば芝が無言で銃を手渡してくる。
それを取り何の迷いもなく放たれた弾は楠森の右肩、智の右手と左足に貫通した。
痛い痛いと泣き叫ぶ二人。
特に智の右手はよく宏樹に触れていた。どこへ行くにも執拗に追い掛け連れ回し、拒絶する度に宏樹の細い手首や腕を掴み、痣が残るほどに。
転がり喚く智の右手を思い切り踏みつけ嬲る。ずっと燻っていた激情も多少は消えたが、それでもまだ足りない。
 
「喜べ屑。こいつらがお前を"可愛がって"くれるらしい。俺がお前を可愛がる必要もないほどに、な」
 
呻き顔を真っ赤にして泣く智の顔が汚く思えて仕方ない。全く心揺す振られないそれに、ただ憤怒が膨れるばかりで。

「――――簡単には殺すな」

悲鳴は気持ちが悪いほどの不協和音。
芝と間宮だけを残し激昂を煙草で紛らわし告げれば、小さく頭を下げた二人は足早に部下達の後を追って出て行った。
 
 



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