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バクバクと心臓が暴れ始めて、落ち着こうと呼吸を繰り返した。
「宏樹、大丈夫か?」
すぐに部屋に入ってきた冬嗣さんは、足早に傍まで来ると俺の顔を覗き込むように屈みそっと抱き締めてくれた。
これもまた、久しぶりの人の温もり。じわじわと込み上げる嬉しさにおずおずと大きな背中に腕を回す。
「大丈夫です。……冬嗣さん、本当にありがとうございます」
傷を気にしているのか、やんわりと身体を離されてしまい少し名残惜しい。
それを気にしないようにし、今までのことに対して礼を言う。
「冬嗣さんのお陰で学校に通えて、友達もできました」
「そうか」
「……なのに、俺」
「宏樹、お前が気にすることはないんだ。お前は何も悪いことはしていないし、殴ったのだって正当防衛だ。だから、……泣くな」
涙腺はなかなか頑丈にはなってくれない。
情けなさと、冬嗣さんの優しさに再び涙が落ちて布団を握り締める。
その手を俺の倍ある大きい手のひらで優しく包まれて、じっと冬嗣さんを見た。
「俺、なんでもします。お金は、すぐには返せないけど必ず働いて返します。だからっ、」
「金を返す必要はない。あれは全額、宏樹の金だから」
「……は、?」
「もうお前は俺の……家族だ。だから、あれは俺の金でもあり宏樹の金でもある」
だから返す必要も、返される気もない。
きっぱりと真剣な表情で言われ、それが冗談でないことを理解した。
……いろいろ無茶苦茶、じゃない?いや、え。かぞく……家族?
「…………家族?」
「ああ。これからはずっと一緒だ」
笑う冬嗣さんの顔をぽかん、と見る。
それもまた冗談ではなさそうで、今度こそ俺は声を出して泣いた。
わんわん声を上げて泣く俺を、冬嗣さんは背中を撫でてくれながら何も言わずいてくれた。
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