鷹の眼 | ナノ



21

「始末すると思ってました」

不服そうな間宮の声に、鷹峰はふんと鼻を鳴らした。
本当ならそのつもりだった。間宮が撃った直後までは。
だがそこでふと、あいつらを始末したら宏樹はどう思うだろうと考えた。例え自分を傷つけた人間だろうが、気にしてしまうのではないかと。
正直嘘などいくらでも吐ける。しかしそれが嘘だともしも気づいてしまったら、宏樹は自分を嫌うのではないだろうかと思ったとき、鬼と呼ばれ怖いものなどなかった心が恐怖に震えたのだ。
一回りも違う子供に、こんなにも溺れるなど思いもしなかった。しかしそんな自分も悪くないと思うのだから、相当な末期なのだろう。

「鷹峰に及ばないとしても、あいつらの家を纏めて考えれば力だけはあるからな。ここで恩を売り、しかも駒となるのならば良い"盾"になる」

それを聞き、間宮は納得はするが気に入らないといった表情だった。
あの屑共がしたのは始末しても尚胸糞悪いことばかりで、正直あの場で撃ち殺してしまおうかと思ったくらいだ。止めたのは鷹峰がさり気なく視線を投げたから。それがなければ食堂は血の海になっていただろう。

「しかし宏……彼のことは、」
「許すつもりは毛頭ない。二度と宏樹の目に映らないようにするさ。だがまあ、弾除けくらいにはなるだろう」

未だ抱かれたまま眠る宏樹の名前を呼ぼうとし、ぎろりと睨まれ言い直す。
いくら家の問題を片付けたとはいえ、確実に全てが終わったとは言い切れない。これから宏樹は鷹峰の、新たな当主となった冬嗣の隣に立つことになる。若い冬嗣が当主になることを渋々納得した狸達だが、宏樹のことを許すとは思えない。
今でさえ婚約者候補として、無駄な写真を送ってきたりわざとらしく娘を引き合わせたりするのだ。危険極まりない。

「あの分家の者は潰すのですか?」
「あれの家は潰さない。許すつもりはないが、宏樹に何もしていなかったということは情報は漏れていないはずなのに、本能的に何かを察したからだ。あそこの家はそういうのに長けている奴が多く、有効活用出来るがこういうときは邪魔で仕様がない」

鷹峰が鋭く舌打ちを鳴らした。
書記含むあそこの家系は、所謂天啓じみたものを持っている。
勘が冴えていたり、嫌な予感が真となったり。あの屑に堕ちたものの、宏樹のバックにいる大きなもの(鷹峰)を察したのだから、十分役立つ。




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