鷹の眼 | ナノ



19

「すみません、ボス」

伏し目がちに謝罪をした男に、鷹峰は視線だけで返した。
音がなかったのは、いつの間にか取り付けられていたサイレンサーのせいだったらしい。これでもう、俺達はいつ死んでもおかしくない。

「――お前らに、救済処置を与えてやろう」

だと言うのに、突如鷹峰はそう言った。迫る死にひたすら床を見つめていた俺は、唖然と目を見開く。

「一、今ここで死ぬ。 二、宏樹と同じように暴行される。 三、お前らを欲しがっている人間の下に行く」

銃を向けられながらの淡々とした言葉は、何の光もなかった。
一も二も、結局は同じ結末だろう。それは確実と言える。鷹峰が俺達を許すはずがない。なら、残るは三だ。しかし、その意味は……

「お前はドイツ、お前はイタリア、お前らは片方ずつ中国、お前は……あとだ」

俺、副会長、会計と視線だけで見遣り、国を告げる。
ドイツ……以前、パーティーで俺のことを嫌な目で見てきたやたらでかく、獰猛な目をしていた男を思い出した。まさか、と思うがあの男は裏でも有名な奴だったはずだ。鷹峰と繋がりがあってもおかしくない。それぞれにも心当たりがあるようだ。
書記は何故かこの場では言われず、しかしそれが良い事とは到底思えなかった。

「お前とお前は日本だ。…………さあ、どうする?」

他二人はあり得ない展開に今にも失神しそうなほど、断続的に本当に小さく声を出していた。
条件を提示されるまでは死んでもいいと思っていた。だがいざ目の前にすると漠然と死にたくない、そんな思いが渦巻く。
だがあいつに支配されるのも嫌だ。……ならば。




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