鷹の眼 | ナノ



17

「分家……?腐るって、一体なんのことだよ!?」

意味が分からないと智は首を傾げたが、その意味を理解した俺達は一様に顔色を失くした。
智は理事長の甥である。血縁関係にある智を"こんな奴"とこの男が言ったということは、楠森家の話であることは間違いない。
そして分家。楠森は、この世界で表からも裏からも恐れられている鷹峰の分家である。
鷹峰の力は凄まじく、表方は一流大企業主とされているが裏では残酷非道さで有名で、ヤクザでもあると囁かれている。方々に強い権力者が揃っている為、おいそれと介入すれば一瞬で破滅させられ、この世で生きて行くことは出来ない。というのはこの学園、ひいてはこの世界に属する者なら誰だって知っていることだ。それこそ、子供でさえも。
だからこそ、理事長はこの学園で好き放題してきた。鷹峰から理事長を任されているのを良いことに甥を入学させることも、目障りな人間を消すことも、――甥に付き纏う平凡な男を、甚振(いたぶ)ることも。

もちろん、生徒会役員はこの学園でトップを誇る家柄だ。だが、その生徒会役員全員を持ってしても、鷹峰に挑むというのは分が悪すぎる。
挑むことは出来る。ただし、必ずしも生きていられると思うな。……それは現会長、現当主であるそれぞれの父親から言い含められたきた言葉。
その、鷹峰が目の前の男だということに気づき、その場でガクリと膝をついた。

「おい!?どうしたんだよ!!直人!!!」

ただ呆然と鷹峰を見ていた俺を揺さぶるようにして智は詰め寄る。
自分のことしか考えない。現状を全く理解せず、しようともしないかつて眩しかったその存在が、今は鬱陶しくて仕方が無い。
突き飛ばすようにして智を離した直人は、そこでハッと目を見開いた。

「……ま、さか…」

鷹峰に抱き上げられた、自分達や智に付き纏っていた名前も覚えていない生徒。
ここに現れた時、脇目も振らず生徒へと近寄った。誰しもを近付けない男が、今も尚大事そうに抱いているその生徒は、まさか……。



(121108:誤字訂正)




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