鷹の眼 | ナノ



15

ピシリと鋭い空気が食堂に走る。
周りでただ見ていた生徒らが最初に俺達を見て、それから握る銃を見る。そして面白いほどに顔色を失くし、後ずさる者や腰を抜かす者。
屑共も一様に震え、怯えと恐怖……少しの怒りが混じる視線をぶつけてきた。
 
「あー!お前誰だ!?すげーかっこいいな!名前なんていうんだ!?」
 
原因たる屑の声の、不愉快極まりないこと。
宏樹を傷つけた奴が、止めもせずに優越感に浸っていた奴が、今も尚泣いている宏樹を見もしないで自分だけが被害者面をする奴が。
部下が前に出ようとするのを止め、調子に乗って手を伸ばしてくる屑をあらん限りの力で蹴り飛ばす。
なんと形容していいのか分からない、今まで感じたことのない感情が荒れ狂う。
喚く屑を後回しに、宏樹がいるだろう方へ向かう。
他と違う顔で俺を見る書記――こいつが報告にあった分家の者か、――にすれ違い様「覚悟しろ」と言えば辛うじて悲鳴を飲み込んだが、無様に震え始めた。
蹲って倒れている宏樹の横に膝をつけば、傍にいた間宮が頭を下げたのが視界に入る。
氷だけで済んでいるということは、火傷はそこまで酷くないのだろう。しかし、可愛らしい顔が赤くなりぐしゃぐしゃに泣いている姿は至極痛ましい。
 
三年会わなかったが、会った当初からあまり変わっていない気がする。
報告ではもっぱら自炊で、屑に無理やり連れてこられた食堂では俺に気を遣って安いものばかり……しかも栄養の偏るものばかり食べていたとあった。
だからか、身長も華奢な身体もそこまで変化がない。成長期だというのに。
傷に注意しながら抱き上げた宏樹の軽さに歯痒い思いをしながら、その額に口づける。
 
「な、なんで宏樹なんか抱っこしてんだよ!宏樹なんかより俺を抱っこしろよ!!」
 
どこまでも人の神経を逆撫でする屑だ。
宏樹の頭を肩に凭れさせ、腕を片方ずつ首へと回させる。
無意識だろう、小さく力を込めた腕が愛しい。
さっさと事を終えて、沢山食事をさせなければな――。
 

---side out---





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