鷹の眼 | ナノ



12

一歩足を踏み出したときだった。
パァーンッと甲高い音が響いて、びくりとその音の大きさに身体が竦んだ。
恐る恐る音の場所、食堂の入り口に視線を向けると黒服の男たちに囲まれた、眼光鋭く役員がいるほうを睨んでいる男がいた。
この学園には美形が多い。だから平凡な俺も見慣れていたけど、男の容姿は飛び抜けていることが分かる。
上げられていた腕を下げた男は、そのままゆっくりと坂下くんを囲む役員たちのほうへ歩く。
ふとその手が握る物を見て、ザッと血の気が引く。それに気づいた生徒たちも無意識に後ずさっていく。
 
「あー!お前誰だ!?すげーかっこいいな!名前なんていうんだ!?」
 
やはりというか、本当にただ馬鹿でしかないんだなと呆れた。
今まで慰められながら最低だと暴力を揮う役員たちを止めもせず泣いていた転校生が、役員たちよりも美しい男を見て、駆け寄ったのだ。
その手にある――拳銃に、気付きもせず。
 
「さ、智!駄目です!戻って……!」
 
気付いていた副会長が必死に手を伸ばすが、掴むことなく。
近づいてきた転校生に、男の周りにいた黒服たちが前に出ようとするのを、男が止める。
それに気を良くした転校生が「なぁっ、名前は!?」と、男へと手を伸ばした瞬間。
思い切り男の足が転校生の脇腹に入り、文字通り転校生は飛ぶようにテーブルと椅子を巻き込み倒れた。
 
「「「「「「智!!」」」」」」
 
あまりの痛みに声も出ないのか、蹲る転校生に書記以外の人間が駆け寄っていく。
不思議に思い書記を見ると、ガタガタと真っ青に震えながら男を見ていた。
 
「……いってえええ!!おい!なにすんだよお前!こんなことしちゃいけないんだぞ!謝れよ!最低だ!!」
「さ、智……」
「あっ、分かった!お前も友達がいないんだろ!だから寂しくてこんなことするんだろ!?大丈夫だ、俺が友達になってやるから!!」
 
あれだけの蹴りを受けながらも、副会長に支えられながら喚く力があるのが信じられない。
男はちらりとも視線を向けないまま、倒れている坂下くんの元へ向かった。
ちょうどこちら側にあるテーブルが退かされているので、その様子はよく見えて……
 


(121102)
(121102:誤字修正)




[*prev] [next#]
>>栞を挿む

[TOP]

「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -