鷹の眼 | ナノ



11

---とある一般生徒視点---


外部生として入学した坂下宏樹という人物は、有名だった。
元々外部生というだけで珍しかったのに、天涯孤独だという。やはりそういう噂はあっという間に巡り。
どうしてそんな彼がこの学園に入学出来たのか、庶民のくせに、どうせどこかの愛人の子なんだろう、とか。……最初の頃は不躾な視線が多かったと思う。
けれどそんなものに負けやしなかった彼は、突然やってきた転校生に巻き込まれ、今はとても疲れた様子だった。
 
その日も少しやつれた顔で食堂に引っ張られてきた彼は、いつも通り横暴な振る舞いをする転校生の隣に座らされていた。
生徒会役員の親衛隊たちはそんな彼と転校生へ罵声を飛ばす。可愛い顔や綺麗な顔が台無しなその様は、以前の学園では見られなかった光景だ。
確かに役員に近づく人間を許しはしなかったが、ここまでじゃなかった。
坂下くんが役員に近づきたいが為に転校生と一緒にいると、本気で思っているのは恋に盲目な人間だけだ。
僕や、興味がない生徒、今は離れていてほしいと頼まれた坂下くんの友人たちは、理解している。
というか、あの顔を見てそう思えるほうが不思議でしょうがない。
 
会長が味噌汁をかけたのが分かった瞬間、もう我慢できなかった。
それは坂下くんの友人たちもそうで、一斉に立ち上がっていた。
信じられない暴言の数々と振る舞いに、唖然と怒りがごちゃ混ぜになって変に冷静で。
だから坂下くんが転校生と副会長を殴ったときは、思わず「よし!」なんて言って隣にいた友人に苦笑されたし。
 
怒り任せに反撃した副会長と、便乗して暴力を揮う他の役員たち。
気づいていないのだろう、この場で親衛隊以外の誰しもが冷めた目で見ていることに。
耐えられない、見ていられないと泣き出す生徒、風紀に連絡しているのに未だ来ない事に苛立っている生徒。
下手に手を出せば、今度はこちらが標的にされる。それでもこの状況を見て見ぬ振りなどできない。



(121102)




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