一万打感謝企画 | ナノ



01

死亡フラグが立ってから、半月が経ちました。
一向にファンクラブの人達に呼び出されることなく、制裁もありません。
僕が先輩に助けられて、しかも髪に触ってしまったことは見られていたはずなのに、何故なのか。不気味で余計に怖い毎日です……。
今日も一日何事もなく終わり、いそいそと席から立ち上がる。今日は図書委員の日だから急がなくては。
廊下に出ると別のクラスの友人に声を掛けられ、返却する本を渡された。

「もう、自分で返しにきてよ」
「ごめんごめん。今日は高坂んちに行く約束してんだよ」
「仕方ないなあ…」

友人、植野が謝りながらも笑い手を合わせる。
その少し後ろでこっちを見ているのが高坂くん、かな。なんだか微笑ましそうな目で見られてるのは気のせい……だと思う。

「じゃあな、また明日!」

手を振って走って行った植野にまたね、と返して逆方向へ歩き出す。
ここの図書館は、とにかく広い。かなりの数の本が揃っていて、マニア向けのもある。そんな図書館でする仕事は、実は少ない。
膨大な本を整理するなんて無理だし、下手にいじって汚したり傷つけたら大変だからしなくていいことになってるんだ。そういうのは専門の業者さんがしてくれるから。
だから僕らがするのは貸し出しと返却の受付と、新書の選別、あとは掃除くらい。
図書館にはあまり生徒が来ないから、悪く言えば退屈でよく言えば楽なんだけどね。
 
(……だからって、なんでこんな状況に…)
 
図書館の扉を開けて目に飛び込んできたのは、勿論無人の室内。
だけど、何故か僕が座るカウンターの前にわざわざ椅子を持ってきて眠っている染井先輩を見つけて立ち尽くした。
 
(…………久しぶりだな、)
 
少しだけ開けられた窓から入る風に靡き、揺れる染井先輩の髪。
今日もふわふわと柔らかそうで、無意識に右手が上がる。
はっとしてそれを押さえ、どうしたものかと戸惑う。




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