Short | ナノ



……あれぇ?

いつも世話にきている中庭の花壇の前で、腹が立つくらい身長の高い男が立っていた。
……なにしてんだ?ってかあんだけでかい奴、この学校で一人しか知らないんだけど。

「あのー……」

とりあえずそこにいられると邪魔なんだけどなー。
声をかけると、びくりと図体を震わせて振り返った。
あ、やっぱりバスケ部の高柳じゃん。

「えーっと………………どうかした?」
「……いや、」

何て言おうか迷っちゃったよ。だってイケメンの顔が、目が真っ赤になってんだもん。
あ、もんとか言っちゃったきもい。
明らかに泣いてましたーな高柳は、俺を見て一瞬目を見開いたけどすぐに顔を伏せた。

「……」
「………」
「………」
「…………」

えええ……なにこれ、どうしたらいいの。なんにも喋んないんだけど。
たぶん、バスケでなんかあったんだろうな。じゃなきゃこんな落ち込むことないと思う、し。
だって高柳ってイケメンで性格も良くて、蟻が砂糖に群がるように女も男も選び放題ってくらい超モテモテなんだよ。
絶対フることはあっても、フられることなんてないだろうから。

「うーん……まあ、元気だせよ。な?」

よく分からんけど、なんか落ち込んでるし。それが従兄弟(10歳)と被ったので頭撫でてみた。
ちょうど俯いてたから、結構頑張って背伸びして。……悪かったな、成長期はとっくに終わったよ。
そしたら高柳はびっくりした目で俺を見てきて、ぎゅっと俺のシャツの裾を掴んだ。

「高柳はバスケすげー上手いし、俺、お前がバスケしてんの見るの好きだよ」
「……本当?」
「うん。あんなこと、俺じゃあ一生できないし。頑張ってる奴に言う言葉じゃないけど……頑張れ!」

ようやく会話が出来てほっとした俺は、高柳の表情をよく見てなかった。
嬉しそうに口角が上がり、さっきまでの沈んだ目はどこ行ったんだ!ってくらい、キラキラ……ギラギラした目を、そのとき見ていれば未来は変わってたのか。
とにかくそんなこと微塵も気づいていなかった俺は、この出来事から高柳に何故か懐かれた。
そりゃあもう、掴んだ裾を家に帰るまで放してくれないくらいには。



end.

(121027)
かわいい話が書きたかったん、だ、よ……!



[*prev] [next#]
>>栞を挿む

[TOP]



「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -